2月、美容院に行き、久しぶりに髪の毛を短くしました。アゴと同じくらいの襟足と、鼻と変わらない長さの横髪。色は、ここ1年ずっと続けているみどり色。
みどり色の髪の毛は、わたしのお気に入り。みどり色であることによる自分の高揚感も、視線の向けられ方も、そこから生まれる会話をも楽しい。みどり色の髪の毛で歩くだけで、少しだけすべてがファンタジーになるところもだいすき。
……ここまでが2月、つまり、25歳の間に書き溜めていたこと。ここから26歳の誕生日(3月25日)はあっという間にやってきて、過ぎて、4月から5月に移ろい、今日からは6月です。本当にあっという間に誕生日は過ぎ、全く誕生日ブログではなくなってしまいましたが、書き始めたのだから書き終えます。
と、いうわけで、すでに26歳と2カ月ちょっとの人間になっているので、26歳に起きた最初の変化をお伝えします。猫の登場です。

2匹の猫はひじきとこんぶ。寝てばかりで、食いしん坊、穏やかだけれどたまに甘えてくるキュートなネコネコ。3月の終わりに家にやってきて、初日こそ隠れたり怯えたりしていたけれど、今ではのんきに部屋中をてちてちと歩いています。
猫が家にいるのは、本当はどうしたって現実のはずなのに、自由な生命体がそこここに存在しているという点で、少しだけ日々をファンタジーにしてしまいます。トイレ掃除、散らかした砂の片付け、ブラッシング、ご飯を見守り……と、どこまでも「リアル」な工程の中で限りあるリアルな生命と向き合っていても、そこにただいる“わたしとは別のことわりで動いている生命体が生活空間の中にいる”ということ自体が、“わたしの人生”にとってちょっとファンタジーなのです。
『いまファンタジーにできること(河出文庫)』。ファンタジーつながりで、少しこの本の話をさせてください。読んですぐに、「これは、まさに、文庫としてポケットに忍ばせておくにふさわしい、おまもりだ!」となった1冊です。

内容は、A・K・ル=グヴァンさんの行ってきたスピーチやその原稿のいくつかをまとめたもの。スピーチの原稿ゆえに、語りかけられるような口調で続く1冊で、ひとつひとつの言葉から彼女の想い、強さ、やさしさ、愛、怒り、そしてユーモアと知性、チャーミングで芯のあるそのかっこよさが溢れています。
想像力は、倫理について考えるのに役立ちます。戦いのほかにたくさんの比喩があり、戦争のほかにたくさんの選択肢があります。そればかりか、適切なことをする方法のほとんどは、誰かを殺すことを含んでいません。ファンタジーはそういうほかの道について考えるのが得意です。
アーシェラ・K・ル=グヴァン , 谷垣暁美(訳)(2022). いまファンタジーにできること 河出書房新社 p.15-16
25歳、変化の多い1年でした。〈こここ〉というWebメディアの仕事が始まり、引っ越しもし、髪の毛もみどりになり、確定申告だって行いました。柔くしなやかなひとになりたいと「柔らかく・明るく・朗らかに」を心がけていたら、ポップな人だと知り合ったばかりのひとに言われ「ポップ!?」と目を丸くしながらも、どこかうれしくなったりした1年でもありました。

26歳、もっと柔らかくなりたいし、もっとしなやかになりたいです。あやふやなことを壊さずに保てる剛さ(つよさ)や、恐れずに引き返せる豪さ(つよさ)、きちんと悔んで留める勇さ(つよさ)、そういう「パワー」の「強さ」ではない“つよさ”を持ちながら柔らかくしなやかに在りたい。
髪の毛が黒かったころ、わたしはもう少し魔女で、もう少し孤高を目指していた気がします。今でも魔女にはなりたいけれど、孤高で豪華な魔女よりも、『乱と灰色の世界』の乱みたいに、もっと朗らかにだれかの幸せを願う魔女になりたい(この漫画もマイベストに入るだいすきな漫画です。家に来たら貸しますので、あそびにきてね!)。ファンタジーが「ほかの道」を考えるのが得意なのだから、もっとファンタジーを心に置いたままに生きてみたい。今はそんな風に思っています。
26歳もどうぞよろしくお願いいたします。
ちばひなこ

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